多賀町の民話 紙芝居集
田んぼに水が入る季節は、萱原にまるで湖ができたようでした。
お日さまはゆっくりと水面を揺すりながら、キラキラ動いてゆきます。
「婆さん、ちょっと通してくれんか・・・・・」
あぜ道を急いでいる時に限って、お婆さんがうずくまっておりました。
しばらく待っても、もっかい大声で言っても、返事はありません・・・・・。
仕方なく、またいで向こう側へ行こうとしますと、
お婆さんは、空の真ん中に吸い込まれるように、ふぁん〜!
と消えてしまいました。
「誰のイタズラか、わかってるぞ〜」
「誰もおらんよ〜」
がわその風が真っ直ぐに水面を切り、グーンとしぶきをあげました。
あまりにも綺麗なものですから、ついみとれておりますと、
あぜ道の、草や花、小さな生き物たちの、ひとつひとつの生命が
鮮やかに語りかけてくるのでした。
  お多賀杓子  
     
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はなしのはじめ  
 
 
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